毎年この時期になるとプロ野球選手の契約金の話が新聞のスポーツ欄を賑わせる。
おおよそ庶民感覚とはかけ離れた金額を目にすると、
「俺も幼い頃からずっと野球一筋で生きてたら、花形選手とまではいかなくとも一軍には上がれただろうか?」
などと自分の資質もかえりみずに考えてしまう。
けれどよくよく思えば、確かに私は野球こそしてこなかったけれど、SMについてはそれなりに真剣にやってきた。
おかげでいろんな体験をすることができたし、また、いろんな人とも知り合えた。
金に換算するのも野暮だけど、
SMの世界に身を置いたことにより、高い収入を得るのと同等に精神的には豊かな生活を送ることができた。
あるいは、それ以上かもしれない。
私はそんな素晴らしい世界への水先案内人たらんとして、
初心者M女性のためにこのサイトの主宰を務めているが、それも毎日楽しくてしかたがない。
私とのメールや電話のやり取りにより、また実際に調教を施すことにより、
彼女たちがM女性として成長する過程をじかに感じられる喜びは他の何事にも代え難い。
好きこそものの上手なり。
こんな諺があるが、結局のところ私はM女性の魅力にどっぷり取り憑かれてしまった男であり、
ご主人様というよりは、むしろM女性のことを愛してやまないファンなのかもしれない。
だから、例え私が髪の毛をひっ掴んで肉の凶器を喉の奥まで押しつけ、
後ろ手に縛られ
た女性が嗚咽しながら涙を溜めて苦痛の表情に歪むのを冷ややかに見下そうとも、
心の中ではその髪を優しく撫でているし、
また、あまたのS諸氏の中から私を選んでくれたことについて感謝せずにはいられない。
こういう心情を文章にしてしまうのはパートナーの心に甘えを生じさせることにもなるので、
必ずしも誉められたことではないが、そのような精神的な繋がりはSMの世界において不可欠だ。
私はSMはするが、拷問はしない。
プレイの内容によって両者は酷似するけれど、精神性の有無によりそれらは明確に区別されるし、
また、されなければならない。
私がこうやってコラムなり雑記なりでいろんなことを書いているのは、
私たちのプレイにおいて両者を区別するためでもある。
その為に、まずは一方的に発信しているのだ。
もしいつの日か私たちが会った時、
私は貴女がとても実行できそうにない過酷な命令を平然と下すかもしれない。
貴女は羞恥のあまり顔をそむけることになるだろう。
でも決して忘れないで欲しい、
氷のような冷たい表情で言い放つ私の心の片隅では、貴女のことが愛しくてたまらないのだ。
再度言う、私はM女性を愛してやまない。
叶うなら、次はそんな貴女の話を聞かせて欲しい。
shadow
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