「いつ頃からSMに興味を持たれたのですか?」、という質問をよく受ける。
「おそらく小学校高学年の頃で、それは江戸川乱歩に端を発していると思う」
私はずっとそう答えている。
最近の事情は知らないが、そして、おそらくもうそんなものはないのだろうが、
私が小学生の頃には学級文庫というのがあって、そんなに大したスペースではなかったけれども、
教室の後ろにクラスメートの不要になった本が並べられていた。
当時、その学級文庫の中に一番数多く並んでいたのが、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズだ。
(こう書くとかなり年上に勘違いされてしまうだろうか?)
雨の昼休み、野球ごっこができない日などは好んでよく読んだ。
(禁止だったが)時には家に持ち帰ったりして、全てを読破するまでにそう時間はかからなかった。
そうなると「おまえ、早く次のやつ持ってこい」と、クラスのお坊っちゃん連を肘でつついたりしたが、
そのペースも私の欲求には遠く及ばず、いつしかなけなしの小遣いをはたいて乱歩の作品を読むようになった。
「江戸川乱歩は大人向けと子供向けがあって、大人向けは読んじゃダメですよ」と、
心優しき女性担任のT先生が忠告してくれたものの、
少しでも出費を抑えようと私が買った薄っぺらなそれらは、
今思えばことごとくT先生が言うところの大人向けの作品であった。
乱歩の初期作品群と晩年の少年探偵団シリーズはその趣を全く異にし、
読んじゃダメですよと言ったT先生の言葉も今になってみればうなずける。
どの程度理解していたのか定かではないが、
乱歩の初期作品群にちりばめられた妖しい魅力は、当時小学生の私にも少なからず感じ取ることはできた。
大人になって読み返してみると、乱歩の初中期作品の妖しさを彩る一つの要因にSM的な感覚があることは否めない。
そんなわけで、特別な幼児体験もない私にとって、乱歩こそがこの世界に興味を持つきっかけになったのだと思う。
男なら誰でも物心がつく頃にはアニメや特撮もののキャラクターに熱中するものだが、
私はなぜか大の妖怪好きだった。
小学校の入学祝いに買ってもらった「水木しげるの妖怪大図鑑」は当時私の宝物で、
暇を見つけてはページを繰っていたよう思う。
それは幼児向けの図鑑でなく一応ちゃんとした大人用のもので、
当時の私にはそんな文章がまともに読めるはずもなく、
ただ飽きずにモノクロームのイラストを眺めてはあれこれ想像していた。
私はかなり想像力が利くタイプなのだが、これは「水木しげるの妖怪大図鑑」によるところが極めて大きいと思う。
私は女性の体のどこか一部分に触れただけで、あるいは、女性が私の体のどこかに振れただけで絶頂に導くことができるが、
種を明かせば、それは想像力ということだ。
水木しげるは図鑑の締めくくりをこう結んでいる。
「妖怪が存在するかどうか、それはあなたの想像力一つだ」、と。
例えば、小川のせせらぎに混じってジャラジャラという音が聞こえれば、それは「あずき洗い」。
夜のあぜ道で草に足を取られれば、それは「草鞋取り」。
天井に不気味な染みを見つけたら、それは「天井舐め」...
小川は全て宅地になり、あぜ道はコンクリートで舗装され、天井は新素材で覆われるようになった昨今、
そこに妖怪の存在を感じることは極めて困難であり、よって我々の想像力も日々減退しつつあるが、
ことSMに関しては普段の空想があってこそ、実際のプレイにおける喜びも倍増する。
あるいは、あれこれ空想するからこそ、プレイする価値があるとも言える。
そういった土台をすっ飛ばして快楽を得ようとすれば少なからず無理が生じて、
つい安易な快楽に走ってしまう。
空腹時には何を食べても美味しいものだが、
それなくして満足を得ようとすれば、素材や技術などに頼らなくてはならなくなる。
満足するには高い代償が必要になるということだ。
それはSMも同じこと。
安易な快楽に走れば、プレイは日々エスカレートしていくのが落ちだ。
行き着く先は電気ショックにハンダゴテ、はたまた百対百の乱交パーティーか。
もちろん、それを望むなら話は別だが、
そんな女性は一般のSMに対するイメージとは異なり、ごく一部だ。
我々には、女性がSMの世界を極めたいと望まない限り、
そのプレイにおいては最小限の責めで最大限の快楽を提供する義務があると思う。
その為に大いなる手助けとなるのが想像力だ。
ここまで読み進めた貴男に一つ問いたい。
貴男はぬるま湯の浴槽で目を閉じて二時間ばかり空想を楽しめるだろうか?
もしできるのなら、その才能をぜひSMに取り入れるべきだろう。
その能力は間接攻撃において大いに発揮されるはずだ。
また女性の方は、人間的な相性やプレイの好みのみでパートナーを選ぶのは危険だ。
何も分からないままに直接攻撃を多用するパートナーを選んだ場合、
貴女は快楽と引き替えに大きな代償を支払っていることにいつの日か気付くだろう。
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