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SMの世界に興味を持つ多くの人々は、その心の中に自分なりの理想を抱いていることと思う。

特に責め手側の男性の方が、そのイメージは強いのではないだろうか。

理想というものを大きく分ければ、理想の相手、そして理想の環境ということになるだろう。

更に理想の環境を細分化すれば生活的環境と空間的環境に分けることができる。

前者は時間や距離的な問題、後者は空間という言葉そのままに建築的なものだ。

今回タイトルに挙げた収入の問題というのは、この空間的な環境と大いに関わりがある。

このサイトをご覧の多くの男性は、私同様、日々の糧に困りはしないが、

さりとて豪邸を建てられる程でもない稼ぎ、といったところだろう。

この現状がせっかくのプレイの機会を中途半端なものにしている。

この中途半端という表現は私自身が抱く理想が高過ぎるからであって少々言葉が悪いかもしれないが、

少なくとも私が女性を苛めるべき理想の空間的環境というのは、中世ヨーロッパの古城の地下室であり、

ランタンの幻想的な灯であり、肌に伝わる石畳のひんやりとした冷気だ。

決してベットが部屋の大半を占めるラブホテルのような空間ではない。

私の場合なまじ想像力が利くだけに、空間的な環境が欲望を増加させ、あるいは減退させる。

もしラブホテルで隣室からカラオケの歌声が聞こえてこようものなら、一気に熱が冷める。

それを有線の音楽でごまかすのは愚行だ。

なぜなら、M女の喘ぎは静寂な空間にこそ相応しく、また艶かしい。

要するに、私たちは中途半端な収入ゆえ、中途半端な空間でのプレイを無意識の内に選択していると言える。

もしも豊富な財力があるならば、アルファインに代表されるようなホテルを定宿にするだろうし、

あるいは、理想のプライベートダンジョンを持つこともできる。

ここで勘違いしてもらいたくないのが、何も収入が多ければいいと言いたいわけではない。

私には理想とするS男性のイメージがあり、彼は極端にリッチか、あるいは極端に貧乏だ。

もしも技術を備えたホームレスのS男性がいるとしたら、私は憧れ、そして畏怖するだろう。

そのプレイの快楽はいかばかりのものか?

第三者にも、その情景はさぞや強烈に映るに違いない。

ホームレスとまではいかなくとも、

例えば西日で畳の赤茶けた質素な四畳一間のボロアパートでのプレイも甘美だとは思わないか?

声は隣に丸聞こえだし、もちろん部屋にトイレもなければシャワーもない。

そこに場違いなM女を連れ込み、本能のままにいたぶる。

部屋のまわりにデバ亀が集まれば尚良しだ。

想像すると随分刺激されないか?

私たちの多くはセックスを行う空間でSMをも行っているが、そもそもこの選択こそが誤りである。

セックスに相応しい空間とSMに相応しい空間は、必ずしも一致しない。

SMにおいては野外というのが一つのキーワードとなり得るが、それは上記の理由による。

私には気の利いたラブホテルを一件見つけるよりも、さびれた倉庫を一ヶ所発見する方が遙かに有意義だ。

もし、収入が極度に低ければそれらの空間を使わざる得ないわけだが、

計らずもそれが私の理想に合致する。

収入の問題。

私のSM的理想を突き詰めれば、大金持ちになる器量があるか、

あるいは、世を捨てる勇気があるか、ということになってくる。

さて、三十年後にはどうなっていることやら。

しかしここは前向きにプライベートダンジョンの建設でも夢見て、

日々を懸命に生きるという人生のベクトルに転化するのが正解だろうか。

どうせならプライベートダンジョンが一部屋欲しいなどとセコイことは考えず、

長野の山中にでも総工事費30億円で一棟ドカンといくか。

こうなると拷問部屋や地下牢はおろか、ワインセラーからピアノのホール、果ては図書館まで何でもありだ。

そこでみんな預かって面倒見てやるよ!!

と、豪語してみた。

さて、そんなわけで来週も人生頑張るか。



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