タイトル:キャンプ something about me


キャンプをしないと夏が終わらない。

それがないといつまでも思い出作りを求めては過ぎゆく夏を引きずってしまうようで、

半袖一枚ではちょっと肌寒いなと感じる夕暮れになっても快く秋を迎えることはできない。

二十代前半の頃はアバンチュールの二、三をもって夏の思い出としたけれど、

それがいつのまにかアウトドアにすり替わったのは、自分では年相応に大人になったんだと解釈している。

友人たちとスケジュールが合わない年などは、せめて一晩星を眺めて眠りたいと一人で野宿に出かけるけれど、

やはりみんなでワイワイダラダラと過ごす方が涼しい夜山の心地良さとビールの旨さには相応しい。

山中独りで野宿すると時にとても怖い体験をするのでラジオは必需品だが、

連れがいるとそんなことも笑って済むのがいい。

幸いにして今年は4名の友人たちとキャンプを楽しむことができた。

去年は私が参加できなかったので、大がかりなキャンプは二年振りになる。

最も、大がかりと言ったところでたいそうな装備を用意するわけでもなく、

ただ単に参加人数が多いという意味だ。

計五名の一行で多いとは言い難いかも知れないが、

既婚の友人は夏期休暇ともなると家族サービスが優先されるわけで、やはり五名も集まれば贅沢に感じる。

ちなみに、居酒屋にしてもキャンプにしても、

個々とコミュニケーションを取りつつワイワイと過ごすには4,5名がちょうどいいのではないかと思う。

これ以上人数が多くなるとグループに分かれてしまってあちこちで会話の花が咲き、

全員で同じ話を楽しむということがちょっと難しいので、

後で思い返すと「あいつとはあまり話さなかったな」ということがある。

それが5名くらいまでだと、まあ大声を出さずともみんな自然に話を聞いてくれるので、

笑いやツッコミの反応が多い分、場も自然に盛り上がり、

したがって缶ビールの蓋がプシュプシュと絶え間なく開かれ、

夜中には酒が足りないといっては誰かが麓まで車で降りるハメになるというのがいつものパターンだ。

不思議なものでキャンプで飲む酒は不思議と酔わないし翌日にも残らない。

普段なら居酒屋で生中5杯も飲めば冷たいウーロン茶とあさり雑炊が欲しくなる私だが、

キャンプなら500ml十本は飲む。

それでも翌朝は二日酔いもなく、それどころか顔を洗ったついでに缶ビールを川から一本拾い上げては

何の罪悪感もなく朝からプシュッとやる(これもキャンプの醍醐味である!!)。

それはみんなも同じで、キャンプでは誰も歯を磨かないので、

昨夜のあてであるキムチの口臭をプンプン漂わせては、

「おまえのイビキであんまり寝れんかったやないか!!」と友人Tに一通り文句を付け、

「枝豆は残ってないか!?」とRがクーラーボックスの底をゴソゴソやり、

「おいT、ソーメンゆがけ」と、私が意味もなく偉そうに命令しながら、

冷んやりした朝の空気と共にビールを飲むのもまた恒例である。

そんなわけで昼頃までにはまた5.6本空けてしまう。

私が飲むのは500mlで計20本程になるが、それでも少ない方で、

Tは私の倍は飲んでいると推定される。

一人平均30本くらいなので5人のキャンプだと500mlで150本空くことになる。

途中で切れるのが分かっていても、一度に500mlを150本も買うというのはなかなか勇気が要るものだし、

それ以前に車に積みきれない。

一人一台の車でキャンプ場に行けば、夜中にもう一度誰かが麓まで買い出しに降りるという非常にバげた行為は解決されるが、それでは道中が寒い。

道中と言えば私は友人Sの愛車を語らずにはいられない。

Sの愛車の正式名称は知らないが、それは三菱製のジープだ。

自衛隊からの受注がなくなったのと、ディーゼルエンジンということもあり、

せっかくの名車も生産中止の憂き目を見なければならなくなったが、

Sは今でもそれを大切に、だが掃除は全くしないけれども、乗り続けている。

今では街中でも見かけることは少なくなってしまったが、

「男っぽいワイルドな車」という意味においてはパジェロもサーフもチェロキーもその足下には遠く及ばない。

何が男っぽくワイルドかと言えば、まずもってそのジープは天井はおろかドアまでも取り外しが可能だ。

そうやってストリップ状態になったロールバー剥き出しのそれは、

そんじょそこらの軟弱な男ではドライバーズシートに収まるのもはばかられるような雰囲気さえ醸し出す。

更には、それがどういう必要性からなのか私は今もって知らないが、

フロントガラスでさえ前にバタリと倒せる仕組みだ。

こうするとサングラスなしでは運転及び相乗り不可能になるが、その無骨さが一層ワクワクさせる。

自然をダイレクトに感じるという点も見逃せない。

クーラーなどあるはずもなく、走行中の風をもって扇風機とする。

「弱」や「中」などの都合のいい風などなく、あるのは「オフ」か「最強」で走行中は会話もままならないが、

黙して語らずの硬派なドライブもこれはこれで男の世界だ。

雨が降ってもそのまま濡れっぱなしというのも、

ちょっとした雨でさえフランド物の服や時計を気にしてすぐに傘を差すような連中に比べればいさぎよい。

そんなわけで、この車の助手席に乗ってキャンプに出かけるというのも、

私には料理と会話にも負けず劣らずの魅力的なものになっている。

ロールバー剥き出しのジープにサングラスの男たち。

老若男女問わず視線がバンバン飛んできてちょっと気持ち良かったりするのは、

これで結構目立ちたがり屋なのだろうかと乗るたびに思う。

それから、この車で面白いのはすれ違いの挨拶。

このジープ同士がすれ違うとお互い「やあ!!」という感じで手を挙げる。

バイクツーリングのノリに似てるか。

私が知る限り、こんなことをやる車は三菱のジープだけだ。

ランドクルーザー同士でもしてるのかな?

今回も2台のジープとすれ違ったけど、やはり先方もロールバー剥き出しにサングラス姿で、みんな格好良かった。

ダットサンが復活するそうだけど、このジープも最生産してくれないものか。

迷わず買うよ。

というわけで、今年のキャンプの様子を何も書かないうちに疲れてしまった。


つづく(だろうか...)


shadow


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