2020年12月

17日

今年一年を振り返ってみるに、ひたすら親父の介護に明け暮れた一年だった。

あちこち食べ歩かず、もちろん旅行にも行かず、加えて、近年になく清い一年だった。

というのも、セックスは10回もしていないので、今年の俺はほぼ童貞であると言える。

要するに、それだけ介護漬けだった。

といって何もぼやいているわけではない。

それは俺が選んだ道。

仕事も、遊びも、SMも、何事もメリハリが大事だ。

今はしゃがむ時間。

長くしゃがんだ分だけいずれ大きくジャンプするだろう。

たとえば...

春と夏は、豪華客船であちこち旅をしながらの、いわゆる今風で言うところのワーケーション。

最も、俺的には旅仕事と呼んだ方がしっくりと来る。

冬は温泉宿やロッジに長期滞在しての旅仕事。

秋は台湾で旅仕事。

韓国にもM女宅に泊まるツテがあるので旅仕事。

その他日本全国、あるいは世界の何処でも俺を泊めてくれるM女がいるのであればリュックにパソコンと麻縄を入れて旅仕事。

とにかく、アフター介護の俺は気力体力が充実している内はあちこち旅をしながらの仕事が中心になると思われる。

気力体力が衰えたなら、どこか自然の豊かな田舎でひっそりと暮らしつつ仕事に没頭したい。

こんな未来が待っているので、今の介護生活も決して苦ではない。

今はできるだけ親父に楽しく過ごしてもらうことと、新たなレシピを試しつつ家メシを楽しむこと、それが俺の生活の中心だ。

では、また来年。


17日

過日、我が家独特のおでんだねとしてトウモロコシを紹介したが、もう一品肝心なものを紹介し忘れていたので追記しておく。

我が家独特のおでんだねその二は「油かす」だ。

最近では少しずつ認知されてきたが、まだまだ油かすと聞けば天かすと勘違いする者も多い。

牛の小腸を油で揚げたもので、一応は大阪名物ということなっているが、俺の感覚では大阪というよりもむしろ京都名物である。

京都人は油かすを全くプッシュしていないが、京都の多くのお好み焼き屋ではトッピングのメニューにあるか、あるいは最初から入っている。

大阪で油かすと言えばお好み焼きというよりもうどんだが、このような食べ方は比較的最近のものだ。

で、俺はその油かすを今では超高級食材となってしまったコロ(鯨の皮の部分)の代用として入れ始めた。

これがなかなかどうして、代用以上の味わいがある。

その味わいを文章で表現するのは難しく、ここでふと開高健が日本橋にあるおでんの名店たこ梅で出されるサエズリ(鯨の舌)に関して書いたコラムのことを思い出した。

要約すばれ曰く言い難い味があり、いつまでも口の中でクチャクチャ噛むからサエズリとなった。

当時これを読んでたこ一本店に飛んでいったものだが、おでんに入った油かすはコロの代用というよりもサエズリに近いかもしれない。

俺がおでんで最も好きなのは大根と油かす、それくらい気に入っている。

にもかかわらず、俺はおでんに油かすを入れている店を京都でも大阪でも一軒も知らない。

元祖として始めるなら早い者勝ちだと思うがな。

ブツ切り三つほどを串に刺しておでん鍋に入れればそれでこと足りるので、家庭でぜひすすめたい。


10日

葉巻きに手を出そうかどうか悩んでいる。

正確に言えば、親父に葉巻を買ってやろうかどうか悩んでいて、もし買ったのであればどうせ俺も吸うだろうから、親父のために買うすなわち俺のため買う、ということになる。

たまにシェリー酒やウイスキーなどを食後酒として飲みたくなることがあって、その時にのみ葉巻を吸ってみたいのだ。

けれども、あったらあったで昼間でも吸うようになるのかもしれない。

それが嫌で未だ購入には至っていない。

そもそも今回の葉巻の発想は親父の手足が不自由になり、身体機能面から強制的に禁煙になったことにある。

俺に吸いたいなどと言っているわけではないが、特に食事の後などは一服吸いたいに違いない。

さて、どうしたものか。


3日

介護生活を始めて以来、家メシを更に充実させるべくいくつかのアイテムを購入した。

DAISOで売っている茹で玉子の殻を剥きやすくするグッズ、柳包丁、ご飯の引っ付かないしゃもじ、鰻重用の器...等々。

中でも最も買って良かったと思っているのが20cmのフライパンだ。

あまりの使い勝手の良さに今まで家に無かったのが不思議なくらいだ。

焼きそばや焼き飯は言うに及ばず、ちょっとした炒め物をするのにもとても重宝する。

スペイン風オムレツも簡単に作れるし、最近では塩鮭や塩鯖もこれで焼くようになった。

目下、ホテルオムレツを練習中。

いつか野宿を楽しむ日が再び来たら焚き火との相性も良さそうだ。

せいぜいアウトドアでも使うとしよう。


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